タンスの地震対策 — 寝室にある・引き出しが飛ぶ・重ねてある、という3つの固有リスク
根拠: 内閣府「広報ぼうさい 特集3 地震に備える」(2026年9月1日確認) ほか3件(記事末に一覧)
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タンスの地震対策は、食器棚や本棚と同じ「固定しましょう」で片づけられがちです。しかし置かれている場所を思い浮かべると、タンスには他の家具と違う条件が3つあります。
- 寝室に置かれていることが多い。 つまり倒れてくるとき、こちらは寝ている
- 引き出しが飛び出す。 本体が倒れなくても、引き出しだけ飛ぶ
- 上下に分かれている・重ねてある。 洋服タンスの上置きや、積んだ衣装ケースは、本体より先にずれて落ちる
この記事は、この3つの順に整理します。家具転倒対策の全体フロー(集中収納→レイアウト→固定→移動防止)は食器棚の地震対策で詳しく書いたので、共通部分はそちらに譲ります。
まず、なぜタンスを優先するのか
地震のけがの原因は、家具そのものが大きな割合を占めます。1
タンスは背が高く、衣類が詰まって重い。そして多くの家で、人がいちばん無防備になる部屋に置かれています。
リスク1: 寝室にある
東京消防庁は、家具を置く場所そのものについてこう示しています。
- 東京消防庁「自宅の家具転対策」(「「寝る場所」や「座る場所」にはなるべく家具を置かないようにしましょう。」)
寝ている人は、揺れに気づいてから逃げるまでの時間がほぼゼロです。タンスの対策は、固定器具を選ぶ前にベッド・布団との位置関係から見直します。
- タンスの正面が寝床に向いている配置がいちばん危ない。倒れた先に体がある
- 動かせるなら、倒れても寝床に届かない距離・向きに変える
- 動かせないなら、寝る位置のほうを変える。枕の位置を反対にするだけでも直撃は避けられる
寝室全体の家具配置の考え方は寝室の家具配置に整理しています。
寝室のドアの脇にタンスがあると、倒れたとき寝室から出られなくなります。廊下に置いた衣装ケースの列も同じで、避難路を塞ぐ位置からは外します。
リスク2: 引き出しが飛び出す
タンスに固有の問題がこれです。本体を固定しても、揺れの方向によっては引き出しだけが飛び出して落ちます。中身の衣類ごと飛べば重量物ですし、飛び出した引き出しは避難の足場を塞ぎます。
東京消防庁は食器棚の文脈で、収容物の危険をこう指摘しています。4
「本体の固定」と「収容物の飛び出し」は別の対策だ、という指摘です。タンスでは次のように読み替えます。
- 引き出しには、揺れを感知してロックする耐震ラッチや、開放防止のストッパーを付けられるものがある(器具の仕組みは食器棚の耐震ラッチと共通)
- 器具を付けないなら、せめて重いものを下段に入れる。上段が重いほど、飛び出しも転倒も起きやすくなる
- 引き出しの正面が寝床に向いていないことは、ここでも効く
リスク3: 上下分割・重ね家具・衣装ケース
洋服タンスの上置き(上に載せる収納)や、タンスの上に積んだ収納ボックスは、本体より先に落ちます。地震のあとの屋内について、東京消防庁はこう注意しています。5
対策の考え方は3つです。
| 対象 | やること |
|---|---|
| 上下分割タンス | 上下を連結金具や連結ベルトでつなぐ。分かれたまま置かない |
| タンスの天板の上 | 原則なにも載せない。載せるなら軽いものだけ |
| 衣装ケース(プラスチック) | 積み段数を減らして低く使う。重い段を下に。寝床の頭側に積まない |
衣装ケースは軽くて安いぶん、つい高く積み上がります。**「タンスより軽いから安全」ではなく「固定できないから低くする」**が正しい向き合い方です。クローゼットや押し入れの中に移せるなら、それ自体が生活空間の家具を減らす対策になります。6
固定するなら — ネジがいちばん、賃貸は2つ組み合わせ
固定器具の序列は、実験に基づいてはっきり示されています。78
賃貸などで壁に穴を開けられない場合の答えも同じ資料にあります。910
上を押さえるポール式(突っ張り棒)+下をずらさないストッパー式(または粘着マット)を1つずつ、が覚え方です。タンスは天板と天井の間が空いていることが多く、ポール式を使いやすい家具でもあります。個々の器具の効きは突っ張り棒の効果とマットとストッパーの効果、穴を開けない固定の全体像は賃貸で穴を開けない家具固定にまとめています。
なお高層マンションでは、倒れるより滑って動くリスクが加わります。11
長周期地震動の性質と高層階の対策は長周期地震動と高層階の対策へ。
まとめ
- タンスの固有条件は寝室にある・引き出しが飛ぶ・重ねてあるの3つ
- 器具より先に寝床との位置関係。正面が寝床に向く配置と、出入り口脇を避ける
- 本体の固定と引き出しの飛び出し対策は別。重いものは下段へ
- 上下分割タンスは連結、天板の上には載せない、衣装ケースは低く積む
- 固定はネジ(L型金具)が最も効果が高い。賃貸はポール式+ストッパー式(粘着マット)の2つ組み合わせでL型金具と同等
- 概ね10階以上は移動防止対策も
同じ家具転倒シリーズ: 食器棚 / 本棚 / テレビ / 冷蔵庫
出典と根拠
本文の番号に対応する出典と、判断の根拠にした原文の引用です。確認日は当サイトが原文を照合した日です。
内閣府「広報ぼうさい 特集3 地震に備える」2026年9月1日確認
↩ 本文へ近年発生した大きな地震でけがをした人の原因は、約30%から50%が家具類の転倒・落下・移動によるものでした
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ避難通路や、出入り口付近には、転倒、移動しやすい家具類を置かないようにしましょう。
東京都防災ホームページ「自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策」2026年8月23日確認
↩ 本文へ部屋の出入り口や廊下には家具類を置かないように、据え付けの戸棚に収納します。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へまた、食器などの収容物が散乱してケガをする場合もあるので、扉開放防止器具や、ガラス飛散防止フィルムを貼るなどの対策も必要です。
東京消防庁「地震 その時10のポイント」2026年8月15日確認
↩ 本文へ屋内で転倒・落下した家具類や ガラスの破片などに注意する
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ家具転対策に最も有効な方法が、生活空間にある家具を出来る限り減らすことです。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ最も効果の高い家具転対策器具はネジで固定するもの(L型金具等)です。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ転倒防止器具は、震度6強の揺れを再現した実験で、その効果を測定しました。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へしかし、賃貸住宅や大切な家具にキズをつけたくない方には、穴を開けなくて済む器具を、2つ以上組合わせて行う方法がオススメです。
例えば、ストッパー式器具(もしくは粘着マット式)とポール式器具を2つ組み合わせることで、一番効果の高いL型金具と同等の効果を発揮します。
東京都防災ホームページ「自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策」2026年8月23日確認
↩ 本文へネジ止めが難しい場合は、突っ張り棒とストッパー式、突っ張り棒と粘着マットを組み合わせると効果が高くなります。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ概ね10階以上にお住まいの方は、長周期地震動に備え、移動防止対策も必ず実施しましょう。