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食器棚の地震対策と聞くと、まず突っ張り棒やL字金具を思い浮かべます。しかし東京消防庁が示している手順では、固定は3番目です。
先に来るのは「減らす」と「置き方を変える」。この順番を飛ばして器具から入ると、効きの弱い対策に手間とお金をかけることになります。この記事は、その順番に沿って整理します。
対策には4つの段階がある
東京消防庁は、家具転対策をフローとして示しています。1
段階は次のとおりです。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 集中収納(生活空間の家具を減らす) |
| 2 | レイアウトの見直し |
| 3 | 転倒・落下防止対策(固定) |
| 4 | 移動防止対策 |
食器棚は重く、中身が凶器になる家具です。だからこそ1と2を飛ばさない価値があります。
1. そもそも生活空間に要るのか
いちばん効く対策が「置かない」だというのは、器具の話に慣れた目には拍子抜けするかもしれません。ただ理屈は単純で、倒れる家具が無ければ倒れません。2
東京都も同じ方向を示しています。3
食器棚の場合、現実的には次のような判断になります。
- 使っていない食器を減らして、棚そのものを小さいものに替える
- 備え付けの収納がある家なら、日常的に使う食器だけを棚に残す
- 背の高い棚を、背の低い棚2台に分ける
「減らす」が難しくても、中身の量を減らすだけで重心は下がります。 上段に重い食器を積んでいるなら、そこを空けるだけでも状態は変わります。
2. どこに置くか
- 東京消防庁「自宅の家具転対策」(「「寝る場所」や「座る場所」にはなるべく家具を置かないようにしましょう。」)
食器棚で見るべきなのは、倒れたときに何を塞ぐかです。
- ダイニングの椅子の背後にあると、食事中に被災したときに直撃する
- キッチンの出入り口にあると、倒れて逃げ道を塞ぐ
- 寝室に隣接した壁の反対側でも、壁が薄ければ影響が出る
寝室の家具配置の考え方は寝室の家具配置に整理しています。
3. 固定 — ネジがいちばん効く
順番として3番目ですが、効果の序列ははっきりしています。5
賃貸で穴を開けられない場合
ここが多くの家で引っかかる点です。答えも示されています。89
「2つ以上の組み合わせ」でL型金具と同等、という点が重要です。1つでは足りず、2つで届く。東京都も同じ組み合わせを挙げています。10
組み合わせの考え方は、上を押さえる器具(ポール式)と、下をずらさない器具(ストッパー式・粘着マット)を1つずつと覚えると外しません。ポール式単体の効きについては突っ張り棒の効果、マットとストッパーの組み合わせについてはマットとストッパーの効果にまとめています。穴を開けない固定の全般は賃貸で穴を開けない家具固定です。
食器棚に固有の問題:棚が倒れなくても中身は飛ぶ
ここが食器棚を他の家具と分けて考える理由です。11
棚を固定しても、扉が開けば中身は出ます。 割れた食器が床一面に散れば、その部屋は裸足で歩けなくなり、避難の足が止まります。必要な手当ては2つです。
扉開放防止器具(耐震ラッチ)
揺れを感知して扉をロックする器具です。選び方、ビス留めと粘着式の違い、賃貸で使えるタイプは食器棚の耐震ラッチの選び方に詳しく書いています。
ガラス飛散防止フィルム
食器棚のガラス扉は、顔の高さで割れるガラスです。窓ガラスと同じ扱いで考えます。貼り方は窓ガラスの飛散防止フィルムと共通です。12
貼り方に自信がない場合の相談先も示されています。13
4. マンションの高層階は、もう一段ある
4段階目の「移動防止」は、全員に必要なわけではありません。14
高層階では、家具が倒れるのではなく滑って動きます。食器棚のような重い家具が床を移動すると、通路を塞ぎ、人にぶつかります。長周期地震動そのものの性質は長周期地震動と高層階の対策に整理しています。
なぜここまでやるのか
けがの原因の内訳を見ると、優先順位が見えます。15
そして地震の直後に何が起きるかも、消防庁が挙げています。16
備蓄を増やす前に、まず自分がけがをしない状態を作る。食器棚はその筆頭にあたる家具です。
まとめ
- 東京消防庁のフローは集中収納 → レイアウト → 固定 → 移動防止。固定は3番目
- いちばん効くのは生活空間の家具を減らすこと。減らせなくても中身を減らせば重心が下がる
- 置き場所は「寝る場所」「座る場所」「避難通路と出入り口付近」を避ける
- 固定はネジ(L型金具)が最も効果が高い。実験に基づく序列
- 賃貸なら穴を開けない器具を2つ以上組み合わせる。ポール式+ストッパー式でL型金具と同等
- 食器棚に固有の問題は扉と中身。扉開放防止器具とガラス飛散防止フィルムが要る
- 概ね10階以上は、長周期地震動に備えた移動防止対策も
出典と根拠
本文の番号に対応する出典と、判断の根拠にした原文の引用です。確認日は当サイトが原文を照合した日です。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ家具を固定するなどの対策を行う前に、生活空間の家具を減らす集中収納や、レイアウトを見直す必要があります。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ家具転対策に最も有効な方法が、生活空間にある家具を出来る限り減らすことです。
東京都防災ホームページ「自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策」2026年8月23日確認
↩ 本文へ部屋の出入り口や廊下には家具類を置かないように、据え付けの戸棚に収納します。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ避難通路や、出入り口付近には、転倒、移動しやすい家具類を置かないようにしましょう。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ最も効果の高い家具転対策器具はネジで固定するもの(L型金具等)です。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ転倒防止器具は、震度6強の揺れを再現した実験で、その効果を測定しました。
東京消防庁「家具転対策 よくあるご質問」2026年8月23日確認
↩ 本文へ東京消防庁では、家具の転倒等に関する実験結果を踏まえ、安全な家具の置き方をはじめ、効果的な転倒防止器具の取付け方法やガラス類の飛散防止に関する指導指針を定めています。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へしかし、賃貸住宅や大切な家具にキズをつけたくない方には、穴を開けなくて済む器具を、2つ以上組合わせて行う方法がオススメです。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ例えば、ストッパー式器具(もしくは粘着マット式)とポール式器具を2つ組み合わせることで、一番効果の高いL型金具と同等の効果を発揮します。
東京都防災ホームページ「自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策」2026年8月23日確認
↩ 本文へネジ止めが難しい場合は、突っ張り棒とストッパー式、突っ張り棒と粘着マットを組み合わせると効果が高くなります。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へまた、食器などの収容物が散乱してケガをする場合もあるので、扉開放防止器具や、ガラス飛散防止フィルムを貼るなどの対策も必要です。
東京都防災ホームページ「自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策」2026年8月23日確認
↩ 本文へガラス製の扉、窓などに貼るフィルム。
割れた際の破片飛散を防ぐ。
東京消防庁「家具転対策 よくあるご質問」2026年8月23日確認
↩ 本文へまた、家具販売店やホームセンター等の中には、家具類の転倒・落下・移動防止方法やガラス飛散防止フィルム等の貼り方についてのアドバイザーを配置している店舗もあります。
東京消防庁「自宅の家具転対策」2026年8月3日確認
↩ 本文へ概ね10階以上にお住まいの方は、長周期地震動に備え、移動防止対策も必ず実施しましょう。
内閣府「広報ぼうさい 特集3 地震に備える」2026年9月1日確認
↩ 本文へ近年発生した大きな地震でけがをした人の原因は、約30%から50%が家具類の転倒・落下・移動によるものでした
東京消防庁「地震 その時10のポイント」2026年8月15日確認
↩ 本文へ屋内で転倒・落下した家具類や ガラスの破片などに注意する