災害別

みなし仮設住宅とは — 賃貸住宅を仮設住宅として借り上げる仕組みと条件

根拠: 内閣府(防災担当)「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針 参考資料 5.応急仮設住宅(1)総論」(2026年8月21日確認)

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大きな災害のあと、報道で映るのは同じ形の建物が並ぶプレハブの仮設住宅です。ただ、実際に供与される住まいはそれだけではありません。民間の賃貸住宅をそのまま借り上げて仮設住宅として提供する方式があり、これが「みなし仮設住宅」と呼ばれています。行政の資料では「応急借上げ住宅」と書かれます。

この記事は、どちらを選ぶ話ではなく、制度としてどう位置づけられているかを先に押さえます。選べる場面は限られていて、多くは自治体がどちらを供与するかを決めるためです。

根拠は災害救助法の応急仮設住宅

みなし仮設住宅は独立した制度ではなく、応急仮設住宅の供与方法の一つとして書かれています。1

「設置に代えて」という書き方が要点です。建てる代わりに借りる。したがって、入居できる人の条件は建設型と共通です。

入居できるのは誰か

条件は応急仮設住宅そのものの基準として定められています。2

読み分けると、条件は二つです。

  1. 住む家が無くなっていること(全壊・全焼・流失)
  2. 自分の資力では住まいを確保できないこと

被害の程度は罹災証明書で判定されます。手続きの流れは罹災証明書の手続きにまとめています。実際の運用では、災害の規模や自治体の判断で対象が広がることもあります。自分が当てはまるかを自己判定せず、窓口で確認するのが確実です。

供与期間は「建築基準法の期限まで」

期間の定め方が独特で、年数が直接書かれていません。3

建築基準法側の期限を参照する形になっているため、災害ごとに実際の期間は変わり得ます。大規模災害では延長の措置が取られてきました。入居時に「いつまでか」と「延長の判断はいつ出るか」を確認しておくと、次の住まいを探し始める時期を決められます。

建設型と借上げ型の違い

内閣府の資料は、両方式の特徴と課題を並べています。まず、借上げ型が早いという点です。4

一方で、成立しない条件もはっきり書かれています。5

被災地そのものが被害を受けていれば、近くの賃貸住宅も同様に使えない可能性が高い。つまり**借上げ型は「早い」代わりに「遠くなりやすい」**という性質を持ちます。

主な違いを並べると次のようになります。

観点応急建設住宅応急借上げ住宅(みなし仮設)
提供までの時間建設期間が必要既存住宅の活用で比較的短期間
立地被災地の近くで確保しやすい被災地の近くでは確保が難しい
まとまった戸数同じ場所に確保しやすい基本的に困難
居住性規格が決まっている立地・間取りの選択が比較的容易
退去時撤去と廃棄物処理が必要原状回復の調整が必要

内閣府の資料は、原則がどちらかも書いています。6

みなし仮設で起きやすい二つの論点

資料が「課題」として挙げているのは、入居中ではなく出るときの話です。7

原状回復

借りているのは民間の賃貸住宅なので、退去時の扱いは通常の賃貸と同じ論点が出てきます。誰がどこまで負担するかは契約と自治体の運用によります。入居時に、原状回復の範囲がどう決められているかを書面で確認しておくと、後から揉めにくくなります。

そのまま住み続けたい場合

住み心地が良く、生活の再建先もその地域になった場合、そのまま契約を切り替えて住み続けたいという話になります。これは自治体・所有者・入居者の三者の調整事項です。自動的に一般の賃貸契約へ移行するわけではないので、供与期間が終わる前に相談を始める必要があります。

コミュニティの問題は制度側も認識している

借上げ型は物件がばらけるため、同じ被災地の住民が離れて暮らすことになります。8

実務上は、支援情報が届きにくくなることが問題になります。集会所に貼り出される案内や、まとまった戸数に対する巡回支援が届かない位置に住むことになるためです。入居後は、自治体からの通知をどの経路で受け取るか(郵送・メール・アプリ)を早めに確認しておくと取りこぼしが減ります。

仮設住宅に入らない選択肢もある

住宅の被害が半壊程度で、修理すれば住み続けられる場合は、応急修理という選択肢があります。制度の内容は住宅の応急修理制度にまとめています。

避難所から次の住まいまでの間に、公的な施設を一時的に使う運用もあります。一時滞在施設の使い方を参照してください。

また、住宅ローンが残ったまま被災した場合の債務整理は別の枠組みです。被災住宅ローンの減免にまとめています。

相談の順番

  1. 罹災証明書を申請する(被害程度の判定がすべての入口になります)
  2. 市町村の住宅担当窓口で、その災害でみなし仮設が供与されるかを確認する
  3. 供与される場合、物件の探し方(自治体が用意するか、自分で探すか)を確認する
  4. 入居時に、供与期間・延長の判断時期・原状回復の範囲を書面で確認する

物件を自分で探す運用が取られることもあるので、3番を早く確認すると動きが変わります。

まとめ

出典と根拠

本文の番号に対応する出典と、判断の根拠にした原文の引用です。確認日は当サイトが原文を照合した日です。

  1. 内閣府(防災担当)「5.応急仮設住宅(1)総論」2026年8月21日確認

    応急仮設住宅の設置に代えて、賃貸住宅の居室の借上げを実施し、これらを供与することができること
    ↩ 本文へ
  2. 内閣府(防災担当)「5.応急仮設住宅(1)総論」2026年8月21日確認

    住家が全壊、全焼又は流失し、居住する住家がない者であって、自らの資力では住家を得ることができないものに供与するものであること
    ↩ 本文へ
  3. 内閣府(防災担当)「5.応急仮設住宅(1)総論」2026年8月21日確認

    応急仮設住宅を供与できる期間は、完成の日から建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)第 85 条第3項又は第4項に規定する期限までとすること
    ↩ 本文へ
  4. 内閣府(防災担当)「5.応急仮設住宅(1)総論」2026年8月21日確認

    既存の住宅を活用することから比較的短期間に提供可能
    ↩ 本文へ
  5. 内閣府(防災担当)「5.応急仮設住宅(1)総論」2026年8月21日確認

    空家がない場合は対応不能被災地の近くで提供が困難(物件は使用不能の可能性大)
    ↩ 本文へ
  6. 内閣府(防災担当)「5.応急仮設住宅(1)総論」2026年8月21日確認

    応急仮設住宅については、応急建設住宅を原則としているが、一般に応急借上げ住宅の方が応急建設住宅よりも迅速に入居でき、居住性能が高く、コストが低く抑えられること
    ↩ 本文へ
  7. 内閣府(防災担当)「5.応急仮設住宅(1)総論」2026年8月21日確認

    退去時の原状回復の問題(住宅所有者との調整)被災者が継続居住を希望した場合の調整
    ↩ 本文へ
  8. 内閣府(防災担当)「5.応急仮設住宅(1)総論」2026年8月21日確認

    なお、応急借上げ住宅を活用する際には、従前の地域コミュニティの維持や、入居管理の適正な実施に特に留意する必要がある
    ↩ 本文へ