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保育園や学校でもらう「緊急連絡カード」とは別に、子ども自身が持ち歩く迷子札を用意しておこうと考えたとき、最初に迷うのが「何を書けばいいのか」です。
名前と親の携帯番号を書けば十分に思えます。ただ、災害時にはその携帯番号が機能しない時間帯があります。総務省は、地震などの災害時について「地震等の災害が発生した場合、通信が混み合って電話がつながりにくくなります。電気通信事業者各社では、こうした通信の混雑の影響を避けながら、家族や知人との間での安否の確認や避難場所の連絡等をスムーズに行うため、『災害用伝言サービス』を提供しています」と説明しています(総務省「非常時における通信の概要」)。
つまり迷子札は、「電話がつながる前提のカード」ではなく「つながらない時間をまたぐカード」として設計したほうが実用的です。この記事では、その前提で書く内容を整理します。
「迷子札」と「迷子名札」は同じもの
呼び方が2通りあります。ペット用のタグを指して迷子札と呼ぶ用法があるため、子ども向けでは「迷子名札」「防災カード」「緊急連絡カード」といった名前で売られていることもあります。中身は同じで、子どもが身につけて持ち歩く、連絡先を書いたカードを指します。
学校配布の緊急連絡カードとの違いは、持ち主です。緊急連絡カードは学校が保管し、迷子札は子どもが持ち歩きます。したがって「はぐれた先で、通りすがりの大人が読む」ことを前提に書く必要があります。
迷子札に書く内容:5項目
書く量が多いほど良いわけではありません。保護した大人が3秒で読めることが優先です。以下の5項目に絞るのが扱いやすい構成です。
- 子どもの呼び名(フルネームではなく、呼びかけに使う名前)
- 保護者の携帯番号(2人分あれば2つ)
- 災害用伝言ダイヤルの番号 171
- 遠方の親族の電話番号(1件)
- アレルギー・持病・服薬(該当があれば)
3番目と4番目が、この記事でいちばん伝えたい部分です。
書く内容と、あえて書かない内容を並べると次のようになります。
| 書く | 書かない | |
|---|---|---|
| 名前 | 呼び名(表面) / フルネーム(裏面) | フルネームを表面に大きく |
| 連絡先 | 保護者の携帯2件 + 遠方の親族1件 | 自宅の住所を番地まで表面に |
| 通信 | 171と、録音を促す一文 | メールアドレスだけ |
| 健康 | アレルギー・持病・服薬 | 診断名の細かい説明 |
| 学校 | 学校名(裏面) | 学年・組を印字で固定(毎年変わる) |
「書かない」側に理由があります。表面の情報量を増やすほど、保護した大人が読む時間が延び、通りすがりの人に見える情報も増えます。表面は3秒、裏面は30秒という配分で組みます。
なぜ「171」を書いておくのか
災害用伝言サービスは複数あります。総務省は「災害用伝言サービスには、171番に電話をかける『災害用伝言ダイヤル(171)』、携帯電話のネット接続機能を使った『災害用伝言板』、インターネットを使用する『災害用伝言板(web171)』があります」と整理しています(総務省「非常時における通信の概要」)。
子どもを保護した人が親に直接電話をかけられなかった場合でも、名札に171と書いてあれば「ここに録音すれば親に届く」という次の手が伝わります。番号だけでなく「171に『◯◯を保護しています』と録音してください」と一文添えておくと、はじめて使う人でも動けます。伝言ダイヤルの具体的な操作は災害用伝言ダイヤル171の使い方にまとめています。
なぜ遠方の親族を1件書くのか
同じ地域の連絡先ばかり書くと、その地域がまとめて通信障害になったときに全部が止まります。被災地から離れた場所に住む親族を1件入れておくと、その1件が中継地点になります。家族の安否確認ルールそのものの決め方は家族の安否確認ルールと集合場所の決め方で扱っています。
フルネームをそのまま表に書かない
迷子札で意見が分かれるのが、名前の書き方です。
外から見える面にフルネームを大きく書くと、子どもの名前を知った人が親しげに声をかけられる状態になります。日常の通学路でも持ち歩くことを考えると、表面は呼び名だけ、フルネームと連絡先は裏面かカバーの内側という二層構造にしておくほうが無難です。
災害時に保護した大人は、名札をめくる余裕はあります。すれ違いざまに見る通行人には見えない。この差を作れる形にしておきます。
どこに付けるか
名札は「落ちない場所」と「見つかる場所」の両立が必要です。
- ランドセル・リュックの内側ポケット:落ちにくいが、鞄を手放すと一緒に消える
- 靴の中敷きの裏:災害時に鞄を手放しても残る
- 上着のファスナー引き手にカードケース:視認性は高いが、上着を脱ぐと消える
一箇所に決めきらず、鞄と靴の2箇所に同じ情報を入れておくのが現実的です。子どもの防災リュックそのものの中身は子ども用防災リュックの中身で整理しています。
迷子札と一緒に持たせたいもの
迷子札は「見つけてもらったあと」に効くものです。「見つけてもらう」ための道具は別に要ります。
声は数分で枯れますが、笛は枯れません。千葉県も避難時の装備として「荷物は両手が空くリュック」を挙げており(千葉県「避難のときの注意点」)、両手が空く前提で身につけられる小物のほうが子どもには向いています。
迷子札とホイッスルをまとめて子どもの防災リュックに入れておく場合は、リュック本体も軽さで選ぶと運用が続きます。
書いたあと、家で1回試す
作って持たせて終わりにすると、いざというときに機能しません。次の3つをその場で確認します。
- 子どもが自分で裏返せるか(カバーが固い、紐が短いと裏面は読まれません)
- 子どもが自分の呼び名と、171の意味を口で言えるか
- 大人が読んだときに、最初に取るべき行動が書いてあるか
3番目が抜けがちです。番号だけが並んでいると、保護した人は「どこにかけるか」を自分で判断することになります。「電話がつながらないときは171に『◯◯を保護しています』と録音してください」の一文があるだけで、迷う時間が消えます。
年に1度は書き直す
携帯番号は変わります。学年が変わればアレルギーの状況も変わります。防災用品の点検日にまとめて見直すと忘れにくく、防災の日にやる見直しチェックのタイミングに合わせるのが続けやすい方法です。
書いた内容を子ども自身が読めるかどうかも、そのとき一緒に確認しておきます。読めない漢字で書かれた名札は、子どもにとっては白紙と同じです。