車両保険は自然災害で使えるか — 台風・洪水は入り、地震・噴火・津波は抜ける
根拠: 一般社団法人日本損害保険協会(損害保険会社の業界団体。政府機関ではない)「損害保険Q&A くるまの保険 問15 車両保険」(2026年8月23日確認)
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台風で飛んできた瓦が車にぶつかった。冠水した道でエンジンが止まった。雹で屋根がへこんだ。こういうとき車両保険は使えるのか——結論から言うと、多くの自然災害は入ります。ただし地震・噴火・津波だけは別扱いです。
この記事は、なぜそういう線引きになるのかを、約款の作りから説明します。
車両保険は「原則すべて、例外を列挙で抜く」作り
まず基本の考え方です。1
この「偶然な事故」の範囲が、思っているより広く取られています。
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険 問15 車両保険」(「この「偶然な事故」とは、交通事故だけではなく、衝突、接触、墜落、転覆、物の飛来、物の落下、火災、爆発、盗難、台風、洪水、高潮など、あらゆる偶然な事故で、被保険者の過失によって発生した偶然な事故も含みます。」)
台風・洪水・高潮が名指しで入っています。 さらに「物の飛来」「物の落下」も入っているので、飛んできた瓦や倒れた木、雹による損傷もここで拾えます。
つまり車両保険は「この災害は対象」というリストを持っているのではなく、まず全部を対象にしてから、対象外を列挙で抜いていく作りになっています。だから「自分の被害はリストに載っているか」ではなく「免責のリストに引っかかるか」を見るのが正しい読み方です。
抜かれている側を見る
保険金が支払われない主な場合として、次のようなものが挙げられています。
| 抜かれるもの | 意味 |
|---|---|
| 故意または重大な過失 | わざと、または著しく不注意 |
| 無免許・酒酔い・薬物使用の運転 | 運転者側の違法状態 |
| 戦争、内乱、暴動などの異常な事態 | 保険で引き受けられない規模 |
| 地震・噴火またはこれらによる津波 | 後述 |
| 詐欺、横領 | |
| 競技・曲技・試験のための使用 | サーキット走行など |
| 欠陥、摩滅、腐しょく、さび、自然の消耗 | 経年劣化 |
| 故障損害 | 事故ではなく壊れただけ |
自然災害と紛らわしいのが、下の2つです。2
塩害でさびた、というのは基本的に「自然の消耗」の側です。台風のときに海水をかぶって一気に壊れたのか、海沿いに長年停めていて徐々にさびたのか。この区別が支払いの分かれ目になります。
タイヤにも独自の扱いがあります。3
タイヤだけが傷んだ場合は出ない。 車体と一緒に損害を受けたなら出る、という条件付きです。
地震・噴火・津波だけが別枠なのはなぜか
免責リストの中で、地震だけは扱いが違います。4
台風や洪水は「毎年どこかで起きるが、全国が同時に被災することはない」災害です。保険は多数の契約者から集めた保険料で少数の被害を埋める仕組みなので、この形なら成り立ちます。
対して地震は、一度に広い範囲の車が同時に全損になりうる。この規模のリスクを民間の車両保険だけで引き受けるのは難しく、そのため免責に置かれています。建物の火災保険で地震火災が対象外になっているのと同じ構造です。
ただし、完全に手当てがないわけではありません。
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険 問15 車両保険」(「なお、上記のとおり「地震・噴火またはこれらによる津波によって生じた損害」については、保険金支払いの対象外ですが、一定の条件(補償する損害を限定しないタイプの車両保険を契約している場合で車両が全損となった場合など)で、一定額(50万円など)を扱っている会社もあります。」)
条件が3つ重なっています。補償を限定しないタイプであること、全損であること、そして扱っている会社であること。 詳しくは地震で車が壊れたときの保険に整理しました。
契約前に証券で見るところ
車両保険には補償範囲を絞ったタイプがあります。
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険 問15 車両保険」(「車両保険においては、約款で定めている「保険金を支払わない場合」を除き、原則として、すべての事故に対し、保険金が支払われます(ただし、後述のとおり、契約パターンによって補償範囲を限定している場合があります。)。」)
ここが実務上いちばん重要です。 保険料を抑えるために補償範囲を限定したタイプを選んでいると、単独事故や当て逃げが外れることがあります。自然災害が残るかどうかも契約パターン次第なので、証券で「補償範囲を限定していないか」を確かめておく必要があります。
冠水した場合の公的支援との切り分けは冠水した車と保険に、雹の被害そのものへの備えは車の雹対策にまとめています。
台風の前にできること
保険の話とは別に、被害そのものを減らす余地はあります。台風の予報が出た時点で、車を高い場所や立体駐車場に移す、海沿いや川沿いの駐車場から離す、といった判断です。
冠水してしまうと、保険で直せても車は数週間使えません。 台風前の備えの全体は台風への備えリストにまとめています。
まとめ
- 車両保険は「対象の災害を列挙する」のではなく偶然な事故を原則すべて対象にして、免責を列挙で抜く作り
- 台風・洪水・高潮は名指しで対象。 物の飛来・落下も入るので、飛来物や雹による損傷も拾える
- 地震・噴火・津波は免責。 同時に広範囲が被災する規模のため、民間保険だけでは引き受けにくい
- 地震には一定の条件で一定額を扱う会社もあるが、契約タイプ・全損・会社の3条件が要る
- さび・摩滅は「自然の消耗」で対象外。 タイヤ単独の損害も原則対象外
- 証券で見るべきは補償範囲を限定していないか
出典と根拠
本文の番号に対応する出典と、判断の根拠にした原文の引用です。確認日は当サイトが原文を照合した日です。
一般社団法人日本損害保険協会(損害保険会社の業界団体。政府機関ではない)日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険 問15 車両保険」2026年8月23日確認
↩ 本文へ被保険自動車が、偶然な事故によって損害を受けた場合に保険金を支払う保険です。
一般社団法人日本損害保険協会(損害保険会社の業界団体。政府機関ではない)日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険 問15 車両保険」2026年8月23日確認
↩ 本文へ被保険自動車の欠陥、摩滅、腐しょく、さび、その他自然の消耗による損害
一般社団法人日本損害保険協会(損害保険会社の業界団体。政府機関ではない)日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険 問15 車両保険」2026年8月23日確認
↩ 本文へタイヤ(注2)に生じた損害。ただし、被保険自動車の他の部分と同時に損害を被った場合、火災または盗難によって損害が生じた場合を除く。
一般社団法人日本損害保険協会(損害保険会社の業界団体。政府機関ではない)日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険 問15 車両保険」2026年8月23日確認
↩ 本文へ地震・噴火またはこれらによる津波によって生じた損害