外国人の家族・同僚に災害情報を伝える「やさしい日本語」— 平時に決めておく3つのこと
根拠: 総務省関東総合通信局「災害時に活用できる情報伝達手段」(2026年7月24日確認) ほか3件(記事末に一覧)
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災害のとき、外国人の家族や同僚に一番届きにくいのは「今どうすればいいか」です。テレビもスマホも情報自体は流れているのに、使われている日本語が難しくて意味が取れない、という詰まり方をします。翻訳アプリを渡して終わりにせず、こちらが話す日本語のほうを短くするのが先です。
この記事は、同居する家族・職場の同僚・近所の住人に向けて、こちらから伝える側が準備しておくことをまとめます。避難情報そのものの意味は警戒レベルの意味に整理しています。
そもそも情報は届いている。届いていないのは「意味」
自治体が出した情報が各メディアに流れる仕組みは整備されています。1
非常時には放送局が臨時に立ち上がる制度もあります。2
つまり不足しているのは情報量ではありません。「高齢者等避難」「線状降水帯」「土砂災害警戒情報」といった語が、日本語学習の途中にいる人の語彙から外れているだけです。だから対策は、情報を増やすことではなく、言い換えを用意することになります。
言い換えの型は「短く・言い切る・一文一情報」
やさしい日本語にするときのコツは、単語を易しくすることよりも文の形を変えることにあります。実務で効く型は次の3つです。
- 一文に情報をひとつだけ入れる。 「大雨で川が増水しているので、避難所に行ってください」は2文に割る。「雨が つよいです。」「今から にげてください。」
- 言い切る。 「〜したほうがいいかもしれません」は伝わりません。「今 にげます。」と動詞で終える。
- 二重否定と受け身を消す。 「避難が呼びかけられています」ではなく「にげてください」。
そのうえで語を置き換えます。
| 元の言い方 | やさしい日本語 |
|---|---|
| 高齢者等避難 | としを とった 人・からだが ふじゆうな 人は にげます |
| 避難指示 | みんな にげてください |
| 土砂災害の危険 | 山が くずれます。あぶないです |
| 断水しています | 水が でません |
| ライフラインの復旧 | 水・でんき・ガスが なおること |
| 給水所 | 水を もらう ところ |
漢字にふりがなを振るより、文を割るほうが先に効きます。ふりがなは読めても、単語の意味を知らなければ行動につながらないためです。
数字は言い換えなしで伝わる
言葉が通じにくい相手に対して、数字はそのまま共通言語になります。警戒レベルは1から5の数字で示されます。3
伝えるときは「レベル4です。にげます。」で足ります。段階の意味を全部説明する必要はありません。加えて、動くのはレベル4を待ってからではないことも共有しておきます。4
レベル2の時点で「地図を見る」という行動を割り当てておくと、レベル4で慌てずに済みます。地図の読み方はハザードマップの見方にまとめています。
平時にやっておく3つのこと
言い換えの準備だけでは、当日は動けません。実際に効くのは、平時に一緒に体を動かしておくことです。
1. 避難場所へ一緒に歩く
地図上で指し示すより、一度歩いたほうが確実です。日本語での説明が難しくても、道順は歩けば共有できます。避難場所と避難所は役割が違うので、両方に立ち寄っておくと当日の迷いが減ります(避難所と避難場所の違い)。5
2. 連絡手段を1つに決めて、実際に使ってみる
災害時は電話がつながりにくくなります。6
手段は複数あります。7
日本語の音声ガイダンスを聞き取る前提の手段は、相手によっては難易度が高くなります。文字で残せる伝言板側を主にする、あるいは日本語話者が代理で登録する役割を決めておくほうが現実的です。体験できる期間も設けられています。8
使い方の手順は災害用伝言ダイヤル171の使い方に、家族内のルール作りは家族の安否確認ルールにまとめています。
3. 集合場所を「建物の名前」で決める
「〇〇小学校の校庭」のように、固有名詞ひとつで指せる場所にしておくと、言語に関係なく共有できます。地名の読みが難しい場合は、写真を撮ってスマホに保存しておく方法が確実です。9
情報を受け取る側の装備も分けて考える
停電すると、翻訳アプリを載せたスマホの電池が最優先で減っていきます。日本語音声の情報源をスマホ以外に1つ持たせておくと、電池の消費を情報収集と切り離せます。ラジオは日本語のみですが、放送が続いていること自体が「まだ状況が動いていない」というサインとして読めます。
こんな人に停電中にラジオとライトとスマホ充電を別々に用意したくない
選ぶ理由ラジオ・LEDライト・5800mAhの充電を1台に。手回しとソーラーで電池切れに備える
持ち出し袋を渡す場合は、中身の説明を日本語で長々とするより、袋ごと渡して一度中身を全部出してもらうほうが早く伝わります。用途が分からないものはその場で聞いてもらえます。
職場で伝える場合の違い
家族と違い、職場では相手の在留状況も日本語レベルもばらつきます。全員に同じ説明をするより、次の3点だけを掲示物にして貼っておくほうが機能します。
- 建物のどこから外に出るか(矢印と写真)
- 揺れたときに何をするか(「つくえの したに はいります」)
- 誰に聞けばいいか(担当者の顔写真と名前)
揺れた直後の行動は、言語を問わず同じです。10
「あわてて外に飛び出さない」は、地震の少ない国から来た人ほど直感に反します。文章で伝えるより、防災訓練の場で一度体を動かしてもらうのが早道です。
まとめ
- 情報は届いている。詰まっているのは語彙。言い換えを平時に用意しておく
- 文を短く割り、言い切り、二重否定と受け身を消す。ふりがなより文の形が先
- 警戒レベルは数字なので言い換え不要。「レベル4です。にげます。」で足りる
- レベル2の段階で地図を見る、という行動を割り当てておく
- 避難場所は一緒に歩く。集合場所は固有名詞ひとつで指せる場所にする
- 連絡手段は1つに決め、体験利用期間に実際に使ってみる
- 職場は掲示物3点(出口・揺れたときの動作・聞く相手)に絞る
出典と根拠
本文の番号に対応する出典と、判断の根拠にした原文の引用です。確認日は当サイトが原文を照合した日です。
総務省関東総合通信局「災害時に活用できる情報伝達手段」2026年7月24日確認
↩ 本文へLアラートにより自治体等が発した情報がテレビ・ラジオ・携帯電話・ポータルサイト等の様々なメディアを通じて住民に届く仕組みがある
総務省関東総合通信局「災害時に活用できる情報伝達手段」2026年7月24日確認
↩ 本文へ地震、洪水、豪雪等による非常災害時において、住民に対して必要な情報を正確かつ迅速に提供するため、速やかに臨時災害放送局(FM放送局)を開設できるよう、『臨機の措置』(口頭による申請・免許)による免許制度を整えています
内閣官房「防災気象情報と警戒レベル」2026年7月24日確認
↩ 本文へ警戒レベルは1から5まであり、レベル4までに必ず避難することとされている
内閣官房「防災気象情報と警戒レベル」2026年7月24日確認
↩ 本文へレベル2の段階でハザードマップ等により避難行動を確認することとされている
内閣府「広報ぼうさい 特集 家族で防災」2026年8月15日確認
↩ 本文へ日頃から、自宅、学校、職場の近くや、通勤通学途中にある避難場所を確認しておきましょう
総務省「総務省「非常時における通信の概要」」2026年7月24日確認
↩ 本文へ地震等の災害が発生した場合、通信が混み合って電話がつながりにくくなります。電気通信事業者各社では、こうした通信の混雑の影響を避けながら、家族や知人との間での安否の確認や避難場所の連絡等をスムーズに行うため、『災害用伝言サービス』を提供しています
総務省「総務省「非常時における通信の概要」」2026年7月24日確認
↩ 本文へ災害用伝言サービスには、171番に電話をかける『災害用伝言ダイヤル(171)』、携帯電話のネット接続機能を使った『災害用伝言板』、インターネットを使用する『災害用伝言板(web171)』があります
内閣府「広報ぼうさい 特集 家族で防災」2026年8月15日確認
↩ 本文へこれらのサービスは、年に数回の体験利用期間が設けられていますので、是非実際に使ってみましょう
内閣府「広報ぼうさい 特集 家族で防災」2026年8月15日確認
↩ 本文へ災害は、家族が揃っているときに発生するとは限りません。自宅、学校、職場、出張先等、家族が離れ離れの状態で被災する可能性があります
内閣府「広報ぼうさい 特集 家族で防災」2026年8月15日確認
↩ 本文へ家庭では、頭を保護し、丈夫な机の下などの安全な場所に避難する、あわてて外に飛び出さない、無理に火を消そうとしないなど、台所、リビング、寝室、それぞれの場所で何をすべきかを考えてみましょう