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揚げ物をしていて、鍋から火が立った。この数秒で何をするかで結果が変わります。しかも、とっさに手が伸びるもの——水、濡れ布巾、マヨネーズ——のいくつかは、状況を悪くします。
この記事は、消防庁消防大学校消防研究センターが公開している解説をもとに、やってはいけないことを先に確定させてから、消す手順を整理します。
最初にやることは「火を止める」
道具を探す前に、熱源を切ります。1
「可能であれば」という留保が付いています。炎がコンロのつまみの手前まで来ていて手が届かないなら、無理に近づく場面ではありません。その場合は消火器か、それも無ければ退避と119番の判断に移ります。
水をかけると何が起きるか
いちばん危険な選択がこれです。理由が温度差にあります。2
温度の開きは、想像よりずっと大きくなっています。3
つまり、コップ一杯の水が一瞬で水蒸気になり、その体積で燃えている油を人の側に飛ばします。消えるどころか、火のついた油が広がり、やけどを負います。
この理屈は水そのものだけでなく、水分を含むもの全般に当てはまります。濡れた布巾を絞りきらずにかぶせる、凍った食材を落とす、野菜を投入する——いずれも同じ現象を招きます。
マヨネーズはどうなのか
「マヨネーズを入れると消える」という話が広まっていますが、消防研究センターの説明は条件付きです。まず、水よりは突沸しにくいとされています。4
ただし、そのあとに逆の指摘が続きます。5
- 消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(マヨネーズでの消火)」(「しかし、可燃物の油を燃えている油に注ぎ込むわけですから、まさに「火に油を注ぐ」ことになります。」)
成立条件も明記されています。
- 消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(マヨネーズでの消火)」(「「天ぷら油が容器からあふれ出さない」という条件が満足された場合に限り、消火に成功することが出来るわけです。」)
鍋の大きさ、残っている油の量、投入するマヨネーズの量——この3つが噛み合ったときだけ成立する方法だ、ということです。火が出ている数秒でこれを見積もるのは現実的ではありません。備えとしては、マヨネーズを消火手段の欄に入れず、後述の消火器具を用意しておくほうが確実です。
消火器具で消す
有効なものは示されています。6
住宅用消火器の側からも、同じ性質が説明されています。7
簡易消火具を選ぶなら、確認済みのものという条件が付きます。8
台所に置くなら、強化液の住宅用消火器を1本が基本形です。前掲のとおり水系で天ぷら火災に向くとされており、使用期限も本体に表示されています。そのうえで、コンロのすぐ横に置ける小さいものを足すかどうかを決めます。
| 種類 | 置き場所 | 選ぶときに見る |
|---|---|---|
| 住宅用強化液消火器 | 台所の出入口付近など、手が届いて逃げ道側 | 製造年と使用期限。住宅用の表示 |
| エアゾール式簡易消火具 | コンロのそば、シンク下 | 製造年月。日本消防検定協会の鑑定マークがあるか |
こんな人に台所に消火器を置きたいが、見た目が気になって出しておけない
選ぶ理由住宅用の中性強化液タイプ。台所に出しておける外観で、届く場所に置ける
エアゾール式は製品によって適合する火災の種類が違います。**買う前に商品ページで鑑定マークの有無と、天ぷら油火災に対応しているかを確かめてください。**表示が確認できないものは、上の引用が示す条件を満たしていません。
そして、使った瞬間に起きることを知っておかないと、驚いて手を離すことになります。9
**一瞬、火が大きくなります。**これを知らないと「失敗した」と判断して逃げ出し、中途半端な状態で放置してしまいます。
やけどへの注意も明示されています。10
消火器そのものの操作は3手です。11
家庭に置く1本の選び方は住宅用消火器の選び方に、操作の練習については消火器の使い方に整理しています。
「投げるだけ」の商品には注意が要る
投げつけるタイプの消火用具については、表示をめぐって行政処分が出ています。12
広告の印象だけで選ばないほうがよい領域です。詳細は投てき消火用具は家庭で使えるかにまとめています。
どこで諦めるかを先に決めておく
台所では、換気扇やレンジフードに火が入った時点が実質的な分かれ目になります。ここから先は消す作業ではなく、逃げる作業です。15
判断の線引きは初期消火の限界に詳しく整理しています。
そもそも、こんろは出火原因の上位
備えを後回しにしにくい数字が出ています。16
住宅火災の原因全体は住宅火災の原因に整理しています。揚げ物をする家庭なら、台所に届く場所へ消火器具を1つ置いておくのが、いちばん費用対効果の高い備えになります。
まとめ
- まず熱源を止める。ただし炎で手が届かないなら無理に近づかない
- 水は絶対量として少なくても、瞬間的に水蒸気になって高温の油をまき散らす
- 濡れ布巾・凍った食材・野菜など、水分を含むものも同じ危険がある
- マヨネーズは「油があふれ出さない」条件でのみ成立する方法で、とっさの判断には向かない
- 強化液消火器や、鑑定マークの付いたエアゾール式簡易消火具が有効とされている
- 消火剤を出すと一時的に火勢が拡大する。知らないと途中でやめてしまう
- 天井(換気扇・レンジフード)に火が回ったら消火をやめて逃げ、ドアを閉める
出典と根拠
本文の番号に対応する出典と、判断の根拠にした原文の引用です。確認日は当サイトが原文を照合した日です。
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(消火器具)」2026年8月24日確認
↩ 本文へ天ぷら油火災が発生した場合、可能であれば、まず、ガスコンロなどの火を止めることです。
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(マヨネーズでの消火)」2026年8月24日確認
↩ 本文へ水は100℃で沸騰(1気圧)しますから、高温の油に投入された水は一気に水蒸気となり、周辺に高温の油をまき散らすからです。
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(マヨネーズでの消火)」2026年8月24日確認
↩ 本文へ(ちなみに、天ぷらを揚げているときの油の温度は180℃位ですし、天ぷら油火災になっている時の油の温度は300℃を大きくこえていますから、水は瞬間的に沸騰するのです。)
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(マヨネーズでの消火)」2026年8月24日確認
↩ 本文へマヨネーズの場合、サラダ油が主成分ですから、こうした沸騰による危険性は小さくなります。
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(マヨネーズでの消火)」2026年8月24日確認
↩ 本文へ量が不十分で容器から油があふれ出したら、周辺に火災が拡大して大変危険です。
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(消火器具)」2026年8月24日確認
↩ 本文へ強化液消火器(簡易消火器具)が効果を発揮します。
総務省消防庁予防課「住宅用消火器」2026年8月15日確認
↩ 本文へ水系なので、冷却効果と浸透性に優れており、布団火災や、天ぷら火災に効果的です
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(消火器具)」2026年8月24日確認
↩ 本文へ日本消防検定協会により、天ぷら鍋の火災に対する有効性が確認された鑑定マークの付いたエアゾール式簡易消火具を選ぶことをお勧めします。
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(消火器具)」2026年8月24日確認
↩ 本文へガス系でも、水系でも、消火剤を放出すると一時的に火勢が拡大するので、狭い台所で消火器を使う時には、このことに注意してください。
消防庁消防大学校消防研究センター「天ぷら油火災(消火器具)」2026年8月24日確認
↩ 本文へ油は高温ですから、火傷に注意してください。
総務省消防庁「消火器の正しい使い方」2026年8月15日確認
↩ 本文へ1.安全栓を引き抜く 2.ホースをはずし火元に向ける 3.レバーを強くにぎる
消費者庁「投てき消火用具の販売事業者5社に対する景品表示法に基づく措置命令について」2026年8月20日確認
↩ 本文へ消費者庁は、令和4年5月24日及び同月25日、投てき消火用具の販売事業者5社に対し、5社が供給する投てき消火用具に係る表示について、それぞれ、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。
総務省消防庁「防災・危機管理eカレッジ「1.初期消火」」2026年8月15日確認
↩ 本文へ一般に初期消火が可能なのは、天井に火がまわるまでと言われています
総務省消防庁「防災・危機管理eカレッジ「1.初期消火」」2026年8月15日確認
↩ 本文へ天井に火が燃え移ったら速やかに逃げて下さい
総務省消防庁「防災・危機管理eカレッジ「1.初期消火」」2026年8月15日確認
↩ 本文へ特にマンションでは空気を遮断して炎の勢いを押さえるためドアを閉めて下さい
総務省消防庁「令和6年版 消防白書 4.出火原因」2026年8月21日確認
↩ 本文へこんろによる火災は、2,838件で全火災の7.3%を占めている