介護用ポータブルトイレは防災兼用にできる?選び方5つの条件
根拠: 内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン(令和6年12月改定)」(2026年7月24日確認) ほか3件(記事末に一覧)
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在宅介護でポータブルトイレを使っている、あるいはこれから導入する。そのとき「災害で断水したときもこれで足りるのか」は気になるところです。
結論としては、選び方次第で兼用できます。ただし介護用として売られている製品には、断水時に困る仕様のものもあります。この記事では兼用にするための条件を5つに整理し、条件を満たす製品タイプを比較します。
なぜ兼用を考える価値があるのか
災害時のトイレで最大の問題は「使い慣れていない」ことです。特に高齢の家族がいる家庭では、非常時に初めて見る道具をうまく使えないことがあります。
普段から居室に置いてあるポータブルトイレをそのまま使えるなら、使い方を教える工程が丸ごと不要になります。これは大きな利点です。
なお、避難所側の設備は数が限られます。内閣府は「避難発生当初は避難者50人当たり1基、避難が長期化する場合は20人当たり1基を目安にトイレを確保する」としています(内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン(令和6年12月改定)」)。介助が必要な家族がいる場合、在宅で対応できる備えを持っておく意味は大きくなります。
兼用にするための5条件
条件1:バケツに袋+凝固剤をセットできる
これが最重要です。
介護用ポータブルトイレは通常、バケツに溜めて水洗トイレに流す運用です。ところが断水すると、その「流す先」がなくなります。東京都下水道局は「大震災発生後に下水道の使用制限が実施されている地域においては、使用を控えるようお願いします」としています(東京都下水道局「災害時のトイレ対策について」)。
そこで、バケツにポリ袋をかぶせて凝固剤で固める方式に切り替えられるかを確認します。バケツの口が広く、縁に袋を引っかけて固定できる形状なら切り替えられます。口が狭かったり、内部に段差があると袋がずれます。
凝固剤の方式は神奈川県も紹介していて、「便器に袋を取り付けて、吸水シートで吸収するタイプや凝固剤で固めるタイプがあります」と説明されています(神奈川県「携帯トイレを備蓄しましょう」)。
条件2:肘掛け・背もたれがある
介助が必要な人が座る前提なら、立ち座りを支える部分は外せません。災害時は疲労と睡眠不足で足元がふらつきやすく、平時より支えが要ります。
肘掛けが跳ね上げ式になっているものは、車いすからの横移動(トランスファー)がしやすくなります。
条件3:耐荷重に余裕がある
介助者が体を預ける場面があるため、使用者の体重ぴったりではなく余裕を見ます。100kg前後を上限とする製品が多い一方、180kg程度まで対応する製品もあります。
条件4:高さが合う、または調整できる
足裏が床につかない高さだと、いきむ姿勢が取れません。座面高が調整できるタイプなら、使う人が変わっても合わせられます。
条件5:掃除が水なしでできる
断水中は洗えません。バケツを袋方式で使えば本体は汚れにくくなりますが、便座を拭くための材料は別に要ります。ウェットティッシュを備蓄に入れておきます。手洗いができない環境での衛生管理は断水時の手洗いができないときの衛生にまとめています。
タイプ別の比較
兼用を前提にすると、選択肢は大きく3タイプに分かれます。
| タイプ | 平時の介護 | 災害時 | 置き場所 |
|---|---|---|---|
| 木製・家具調の据置型 | 使いやすい | 袋方式に切り替えられれば可 | 常設(居室) |
| 樹脂製の据置型 | 使いやすい | 同上。軽く動かしやすい | 常設 |
| 折りたたみ式 | 常用には不向き | 収納しやすく持ち出せる | 収納 |
介護がすでに始まっている家庭は、据置型を主軸にして折りたたみ式を予備に持つ形が安定します。介護がまだ先の家庭は、折りたたみ式で耐荷重の大きいものを1台持っておくと、両方の入口になります。
折りたたみ式:耐荷重の大きいもの
介助者が支える場面を想定するなら、耐荷重の表記は確認しておきたいところです。
段差の解消も兼ねたいなら
立ち座りの補助として踏み台を併用する構成もあります。平時は玄関や洗面所の段差解消に使い、災害時はトイレまわりの補助に回せます。
収納しやすい据置タイプ
普段は目立たせたくない、でも常設したい場合の選択肢です。
凝固剤と袋は何回分いるか
本体を用意しても、消耗品がなければ止まります。神奈川県は「1日の排泄の平均回数は1人5回と言われています。携帯トイレは最低3日分、可能であれば7日分を備蓄しましょう」としています(神奈川県「携帯トイレを備蓄しましょう」)。
介助が必要な人は、水分管理や薬の影響で回数が増える場合があります。目安より多めに見ておくほうが安全です。必要数の計算は簡易トイレの必要数で扱っています。
凝固剤の保管期間にも幅があります。神奈川県は「凝固剤は排泄物を固めるだけでなく、消臭効果や除菌効果のあるものや、10年〜15年の長期保管できるものもあります」としています(神奈川県「携帯トイレを備蓄しましょう」)。長期保管品を選べば入れ替えの手間が減ります。
洋式であることの意味
避難所の設備でも洋式が重視されています。文部科学省は「洋式便器を採用するなど、生活様式や児童のニーズ等を踏まえた便所を計画することが重要である。また、障害のある児童生徒、教職員及び学校開放時又は避難所開設時の高齢者、障害者等の要配慮者の利用を踏まえた多様な便所を計画することが重要である。」としています(文部科学省「【ポイント解説】バリアフリートイレ」)。
家庭で選ぶ場合も、しゃがむ姿勢が必要な形は避けます。和式・洋式の使い分けを考える場合は洋式・和式兼用の簡易トイレを参照してください。
介助する側の準備も同時に
トイレの介助では、汚物の処理と手指の衛生が毎回発生します。使い捨て手袋、ウェットティッシュ、消臭袋を本体とセットで置いておきます。高齢の家族がいる家庭の備え全体は高齢の親の防災、介護が必要な場合の備えは介護が必要な家族の防災の備えにまとめています。
おむつを併用している場合の必要量は大人用おむつは何日分備蓄するかで扱っています。