住まいの安全

リチウムイオン電池はなぜ発火するのか|原因の内訳と実際の火災事例

根拠: 東京消防庁「リチウムイオン電池搭載製品の出火危険」(2026年9月2日確認) ほか3件(記事末に一覧)

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結論:誤使用だけが原因ではない

リチウムイオン電池の火災は「落とした」「粗悪品を使った」といった使い手の問題として語られがちです。しかし消防のデータを見ると、そう単純ではありません。1

つまり、気をつけていても起きる領域があるという前提で備える必要があります。この記事では原因の内訳を数で確認し、実際に起きた事例まで見ていきます。予防と発火時の行動はリチウムイオン電池の発火対策|買う・置く・充電する・捨てるで扱っています。

発火のメカニズム

そもそも何が燃えているのかを押さえておくと、後の注意点が理解しやすくなります。2

要点は3つです。

  1. 電池の中に可燃性の液体が入っている
  2. 内部で短絡(ショート)が起きると急激に発熱する
  3. 熱で気化した溶剤に着火して燃える

外から見て異常がなくても、内部で短絡が進行していれば出火に至ります。衝撃を受けた電池をそのまま使い続けるのが危険とされるのは、この時間差があるためです。

出火要因の内訳:「いつも通り使っていた」が最多

原因の割合を見ると、印象と実態がずれていることが分かります。345

整理すると次のようになります。

出火要因件数割合
いつも通り使用していたが出火39件23.4%
衝撃等18件10.8%
分解廃棄等16件9.6%
製品の欠陥6件3.6%
特定できないもの67件40.1%

「いつも通り使用していた」が、特定できたもののなかで最も多いという点が重要です。落としたり分解したりした覚えがないから安全、とは言えません。

どの製品から出ているか

防災用に買ったモバイルバッテリーは、まさにこの最多の区分に入ります。非常持出袋に入れっぱなしにする使い方は、点検の機会が失われやすいという意味で注意が要ります。手回し充電など電池に頼らない手段との併用は手回し充電のモバイルバッテリー|実用になるかの見極めで整理しています。6

充電中と非充電中の割合

「充電中だけ気をつければよい」という理解も、データとは合いません。7

充電中がおよそ半数を占める一方、置いてあるだけの状態からの出火も4割近くあります。保管場所の選び方が、充電時の注意と同じくらい効いてくることになります。

入手経路と入手時期

買い方の影響も数字に出ています。89

古くなったから燃えるとは限らず、買って1年未満の製品が最多という点は直感に反する部分です。経年劣化だけを警戒していると見落とします。

購入時の判断材料としては、NITEが次を挙げています。10

同機構は、事故が起きる時期にも偏りがあるとしています。11

実際の火災事例

東京消防庁は具体的な事例も公表しています。共通しているのは、特別なことをしていない場面で起きているという点です。1213

前者は持ち歩き中、後者は無人の場所での充電中です。「鞄に入れて移動する」「充電したまま席を外す」はどちらも日常の行動で、防災用のバッテリーでも同じ状況が起こり得ます。

異常のサインと、気づいたときの行動

内部の短絡は外からは見えませんが、前触れが出ることがあります。14

消費者庁も同じ趣旨の呼びかけをしています。15

膨らんだ電池を自分で取り外そうとするのは避けてください。分解廃棄等による出火が16件(9.6%)報告されているとおり、取り外し作業そのものが出火の場面になっています。

実際に発火した場合の行動は次のとおりです。161718

防災の備えとして何を変えるか

ここまでのデータから、備蓄品としてのバッテリーの扱いは次のように整理できます。

備蓄全体の見直しの周期は防災用品のローテーション管理|見直す周期の決め方で扱っています。

まとめ

出典と根拠

本文の番号に対応する出典と、判断の根拠にした原文の引用です。確認日は当サイトが原文を照合した日です。

  1. 東京消防庁「リチウムイオン電池搭載製品の出火危険」2026年9月2日確認

    出火要因をみると、使用者の明らかな誤使用(分解、衝撃、充電方法誤り等)により出火する火災の他に、製品の欠陥により製品から突然出火する火災も発生しています。
    ↩ 本文へ
  2. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    リチウムイオン電池は、電解液として可燃性の有機溶剤を使用しているため、衝撃等により内部の正極板と負極板が短絡し、急激に加熱後、揮発した有機溶剤に着火して出火することがあります。
    ↩ 本文へ
  3. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    令和5年中に発生した火災の製品用途別の出火要因をみると、いつも通り使用していたが出火が39件(23.4%)、衝撃等が18件(10.8%)、分解廃棄等が16件(9.6%)発生しています。
    ↩ 本文へ
  4. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    また、製品の欠陥により出火した火災が6件(3.6%)発生しています。
    ↩ 本文へ
  5. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    出火要因が特定できないものは67件(40.1%)となっています。
    ↩ 本文へ
  6. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    令和5年中における製品用途別の火災状況をみると、モバイルバッテリーから出火した火災が最多で、次にスマートフォン、電動アシスト付自転車となっています。
    ↩ 本文へ
  7. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    出火時の充電状況は、充電中が82件(49.1%)、非充電中(待機中含む)が65件(38.9%)、使用中が10件(6.0%)となっています。
    ↩ 本文へ
  8. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    また、出火した製品の入手経路はネット通販が59件(35.3%)。
    ↩ 本文へ
  9. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    令和5年中に発生した火災について、出火した製品の入手時期等をみると、入手時期が1年未満の製品から出火した火災は22件(13.2%)で最多となっています。
    ↩ 本文へ
  10. 製品評価技術基盤機構(NITE)「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご用心〜「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイント〜」2026年8月20日確認

    連絡先が確かなメーカーや販売店から購入する。
    ↩ 本文へ
  11. 製品評価技術基盤機構(NITE)(同上)2026年8月20日確認

    事故発生件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加する傾向にあり、6月~8月にかけてピークを迎えます。
    ↩ 本文へ
  12. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    運行中の電車内において、乗客が鞄の中に入れていたモバイルバッテリーが何らかの要因で短絡し出火したものです。
    ↩ 本文へ
  13. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    無人の事務所のデスク上で充電されていた携帯型扇風機が何らかの要因で短絡し出火したものです。
    ↩ 本文へ
  14. 東京消防庁(同上)2026年9月2日確認

    膨張、充電できない、バッテリーの減りが早くなった、充電中に熱くなるなどの異常がある場合は使用をやめ、製造事業者や販売店に相談する。
    ↩ 本文へ
  15. 消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう - 身に着ける、持ち歩く製品にも使用されています -」2026年8月20日確認

    異常を感じたら使用を中止しましょう
    ↩ 本文へ
  16. 製品評価技術基盤機構(NITE)「モバイルバッテリー「8.異常・発火時はどうする?」」2026年8月20日確認

    煙や炎が噴き出している時は絶対に近寄らないでください。
    ↩ 本文へ
  17. 製品評価技術基盤機構(NITE)(同上)2026年8月20日確認

    火花が収まったら、大量の水を掛けることで消火することができます。
    ↩ 本文へ
  18. 製品評価技術基盤機構(NITE)(同上)2026年8月20日確認

    上記の対処が困難と判断した場合は、身の安全の確保を第一に119番通報してください。
    ↩ 本文へ